労務関係


労務関係

近年、労働者の権利意識が年々高まってきており、労働紛争件数も飛躍的に増加してきています。一方で、労務関係を合法に形成できていない企業が多いのも現実です。

現行労働法規は、労働者側に有利に作られており、経営者側にとっては、不合理に思えても、法的紛争になると、経営者側が一定の負担を強いられることが多いのが現実で、複数の労働者が結託した場合、支払金額も相当高額になることがあります。

現在、労務関係がしっかり整備できていることに自信のない会社は、これまでの労務関係のリスクを軽減する方策をとると共に、今後の労務関係をしっかりと整備されることを強くお勧めします。

また、労働法規は頻繁に改正されているので、これをキャッチアップして、しっかりと社内規定をアップデートされるようにすることが重要です。さらに、能力主義的な給与算定、裁量労働制等を可能にする、個々の労働者の力をより発揮させるような法改正も行われてきていますので、これらの点もチェックされるとよいと思います。



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雇用契約書


新しく雇用し、または、雇用される場合、特に気を付けたよい点はありますか?

労働基準法上、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない、とされております。したがって、労働条件を明示した雇用契約書を取り交わすことが望ましいです。

どのような労働条件を明示する必要がありますか?

①労働契約の期間、②就業の場所及び従事すべき業務、③始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項、④賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇級に関する事項、⑤退職に関する事項、⑥退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期、⑦臨時に支払われる賃金、賞与等、⑧労働者負担の食費、作業用品等、⑨安全及び衛生に関する事項、⑩職業訓練に関する事項、⑪災害補償及び業務上外の傷病扶助、⑫表彰及び制裁、⑬休職に関する事項です。

以上の労働条件は全て書面で明示する必要があるのですか?

⑥以下は、口頭での明示で足りますが、⑤までは、書面を交付する方法による明示が必要となります。なお、⑥以下は、使用者がこれらに関する定めをしている場合にのみ明示が必要となります。

就業規則


就業規則の作成が義務付けられているのはどういう場合ですか?

就業規則は、法人、または、常時10人以上の労働者を使用する個人事業主において、作成する必要があります。

雇用契約書の内容と就業規則の内容が矛盾する場合、どちらが優先しますか?

基本的には、いずれか労働者に有利な方の規定が優先的に適用されることになります。

新しく就業規則を作り、または、就業規則を改定し、その内容が従業員側に不利な場合、その時点以前に遡って従業員に適用されますか?

いいえ。新しい就業規則の内容を、過去において、その処分の対象となる行為に適用するなど、従業員側に不利となる定めを、過去に遡及して適用することはできません。

就業規則はどのような内容の条項を定めても有効ですか?

強行法規(強行法規とは、契約によっても法律の条文に反することができない法律の条項をいい、労働基準法の大半の規定がこれにあたります。)に反する事項については、法律(主に労働基準法)が適用されることになります。

就業規則を新しく定める場合や変更する場合に特に気を付ける点はありますか?

就業規則の制定や変更に有効な効力が発生する要件としては、労働者の意見を聴くこと、内容が合理的であること等の要件を満たすことが必要となるので、この点は注意が必要です。

懲戒処分


懲戒処分が行われる際に、重要な点はどこにありますか?

いずれの懲戒処分が行われる場合にも、就業規則等に定めがなくても、原則として、①公平な取扱い、②懲戒処分の選択の相当性(諸般の事情を総合考慮して判断されます。)、③処分理由の告知と弁明の機会の付与、が重要となります。

懲戒処分が行われる際、従業員である第三者に対する調査が行われようとするとき、同第三者である従業員に調査に協力する義務は生じるのでしょうか?

最高裁判例には、①当該従業員が、他の従業員に対する指導・監督ないしは企業秩序維持を職責とする者であって、調査に協力することが職務内容となっている場合、または、②調査対象である違反行為の性質・内容、当該従業員の右違反行為見聞の機会と職務遂行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情を総合的に判断して調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要且つ合理的な場合には、調査協力義務がある、と述べたものがあります。
簡単に述べると、①には、管理職的な立場にある者や、秩序維持に関係する名目の役職についている者等、②には、近くで聞いていた者、その場に居合わせた者等が含まれると考えられます。
なお、調査協力義務を負わない者であっても、調査協力権はあるので、従業員である第三者が任意に調査に協力するのは基本的に自由であると考えられます。

減給処分が行われるにあたって、何か制限はありますか?

減給については、控除の総額が、一賃金支払期日における賃金の総額の10分の1を超えてはならない、と労働基準法91条が定めているため、1ヶ月毎に給料を支払う企業の場合は、従前の月の給料額の9割未満にすることができません。なお、同条は、1日あたりの賃金を半額を超えて控除することも禁じております。

懲戒解雇を行う前段階としての自宅待機命令を下すことは認められているのでしょうか?

就業規則に定めがなくても認められる、とする判例が複数あります。

自宅待機命令期間中給料は発生しますか?

自宅待機命令は、懲戒処分に該当する事由が判明した場合、懲戒処分に付するか、また、いかなる処分とするかを決定するまでの間、自宅に待機させ、出勤を禁止するものであり、職場で就労することによる混乱や不都合を生じる目的で使われることもあります。これは賃金の支払いを要する点に注意が必要です。

解雇


会社が経営上の必要からする整理解雇が許されるためには、どのような要件を満たす必要がありますか?

①整理解雇の必要性、②解雇回避努力、③解雇基準の合理性および人選の妥当性、④説明と協議、の要件を満たすことが必要です。

変更解約告知(使用者が労働者に対して、従来より不利益な条件による新契約の締結の申込みを行い、これに応じない場合は、解雇とする。)をしようと考えていますが、これは有効ですか?

肯定する判例と否定する判例とに分かれております。

会社が従業員を解雇をした際に解雇通告書において解雇事由を明示したのですが、後で従業員が訴訟を起こした場合、訴訟において別の解雇事由を追加することは認められていますか?

最高裁判例は、これを原則として認めておりません。

契約社員として期間の定めのある雇用契約を会社と従業員が結んだ場合、期間経過後も雇用契約が継続することはあるのでしょうか?

期間が経過した場合、原則として、雇用契約は終了します。もっとも、反復更新された場合や、黙示の更新がなされた場合、期間の定めのない雇用契約と同様の契約として扱われる可能性があります。

解雇をする際に、会社は従業員に対して前もって解雇を通知する必要があるのでしょうか?

解雇をするにあたっては、法令上は、原則として、①30日以上前に予告をするか、②30日分以上の賃金を支払わなくてはならない、とされております。また、翌月から解雇する場合の解雇予告は、解雇の前の月の前半になされることが必要であり(例えば、10月10日に解雇予告を行えば、11月初めから解雇できる。)、仮に前の月の後半に解雇予告を行う場合には、翌々月の初日から解雇の効力が発生する(例えば、10月20日に解雇予告を行った場合、12月初めからしか解雇できない。)ことになります。ただし、労働者の責めに帰すべき事由(重大な服務規律違反または背信行為に限定されます。)による解雇等であるばあいには、上の①、②の要件は適用されず、即時解雇することができます。

解雇の通知は書面で行う必要がありますか?

文書でも口頭でも大丈夫ですが、就業規則に定めがあれば、その方法によることになります。

解雇予告日以降、従業員が解雇の理由を記載した退職証明書を請求した場合は、会社はこれを交付する義務を負うのでしょうか?

この場合、会社は、遅滞なく、解雇事由について具体的に示した(就業規則の該当条項及びその条項にあてはまる具体的な事実関係等)証明書を交付する義務を負います。

時効期間


雇用契約や労働法に関連する特別な時効期間はありますか?

賃金は2年、有給休暇請求権は2年、従業員の退職金は5年、身元保証契約は3年(契約で5年まで延長可)、見習者の身元保証契約は5年となります。



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